経営者Aさんが「社員に自分の気持ちが伝わらない」と嘆いていました。
Aさんは「日頃から社員の幸せを願い、よりよい人間関係を求めて色々やってきたのに・・・。」
「結局さ、何をやっても無駄なんだよね」と嘆いていらっしゃいました。
そこで私は、
「そうでしたか。何をやっても無駄と感じていらっしゃるですね。これまで、どんなことをされたんですか?」とお聞きしました。
Aさん「研修をしたよ!チームビルディング!だけど、やった時は少し良くなるけど結局元に戻るんだよね。」
私「どのくらい良い状態なんですか?」
Aさん「せいぜい1~2ヶ月だよ。」
私「その良い状態の時にAさんはどんなふうに関わるんですか?」
Aさん「どんなふうに?だって研修受けてるからね。」
私「研修受けてるから?」
Aさん「研修受けてるんだからさ、先生から色々聞いてでしょう?それをやればいいんだけどさ、結局は戻るんだよね。」
私「Aさんは皆さんが研修を受けてる時はどうされてるんですか?」
Aさん「私は私の仕事をしてるよ」
私「幹部の方や上司の方はどうされてるんですか?」
Aさん「部下が受けてるから、仕事してるよ。」
Aさんは、部下を変えてくれる研修を受けたんだから、後はそれを実行すればいい。と仰るのです。
幹部の方も上司の方も同じ考えだそうです。
私「その研修は何回受けられたのですか?」
Aさん「効果がないからやめたよ。結局さ、一生懸命にやっても伝わらないんだよ。」
私「社員さんのチームワークを良くしたり、働きやすい環境を作るのは誰ですか?」
Aさん「社員でしょう」
私「その社員さんを育てるのはだれですか?」
Aさん「・・・。」
私「その社員さんは、誰の社員さんですか?」
Aさん「うちの会社の社員だよ。」
私「その社員さんにとってAさんはどんな存在ですか?」
Aさん「社長だよ・・・。」
私「質問を変えますね。社員さんはどなたの姿を見て、何をご覧になって、うちの会社はこういうことを大事にしていると感じるのでしょうか?」
長い長い沈黙の後に絞り出すようにAさんは答えられました。
Aさん「私や幹部や上司だよね。研修講師に丸投げして自分たちは今まで通りで下には変われって言ってる姿を見て大事にしているとは感じないよね・・・。」
Aさんはこれまでも、経営方針として会社をよくしていくことや、笑顔の溢れる組織にすると掲げて数ヶ月はやるけれど、結局何をやっても変わらないと諦めていたそうです。
その後、社員さんとお話しする機会がありました。
「社長は良いこと言うけど続かないんです。だから、また始まったーってみんな思っているんです。研修もその時に喜ぶような言葉を伝えています。その方が社長喜びますからね。」
社員さん達は「社長が何を大切にしていると思う?」という質問に、「時間の使い方とお金の使い方を大切にしていそう」と答えました。なぜなら、それが1番わかりやすいからです。
「社員が大事」といいながら、自分たちに向き合う時間を作らない。話を聞かない。続かない。
Aさんは、社員の皆さんがこの姿を見ていたんだということに、ようやく気が付かれました。
その後、Aさんは優先順位を社員さんとの時間に変えられたそうです。
スタートしたばかりで、時々心が折れそうになりそうになりながらも本気を伝えるんだと頑張っていらっしゃいます。
今後のAさんが楽しみです。